2021年もあと3カ月。
巣籠りばかりで時が流れてる感覚が薄い。
秋かぁ。芋の美味い季節。
という訳で今回はこちらの御題。



ポテトチップスの噺



うだうだ子ちゃん。何時のころからポテトチップスは日本における家庭の菓子となったのでしょう?
私的な感想ですが、1970年代以降ではないかと推察します。
それまでのスナック菓子の主流は古来よりのせんべいやおかき、
あるいは「明治カール」「森永スピン」「東鳩キャラメルコーン」
のようなコーンパフスナックでした。
今菓子売り場を見ると、どうでしょうか。
ポテチの領土が半端ない。すっかり日本に根を下ろしたスナックになっています。
今までいろんな商品がありましたね。
今なお販売してるもの、すでに終売したもの、印象に残る挑戦者たち、
今回はそんな「ニッポンポテチ列伝」とまいりましょう。






フラ印ポテトチップス(ソシオ)


終戦から3年後の1948(昭和23)年にハワイ移民だった濱田音四郎氏が「アメリカンポテトチップス社」を立ち上げ、
日本で初めて発売したとされるポテトチップス。
当時はGHQがまだ日本を統治していた時代で、主な顧客は進駐軍であり、
日本人にはその馴染みの無さもあってなかなか浸透しなかったと言われています。
濱田氏はポテトチップス普及のためにと、あえて製法特許を取らず、
むしろ積極的に自ら製造方法を広めていきました。
やがて後続メーカーの参入によって市場が拡大。
日本に盛大なるポテチ市場が確立するに到ります。
そういう意味でまさに本商品は日本ポテチのパイオニア。
現在はソシオ商事が製造販売を引き継ぎ、
販路なども成城石井や大丸ピーコックといったセレブ御用達スーパーなどに限られてる感もあり、
価格も通常ポテチ商品の倍以上という、ヴィンテージスナックの印象がありますが、
味はシンプルイズザベストを地で行く、しっかりと芋の旨みが堪能できる、
ごまかしの効かない正統派。やや堅揚げなのもナイスで、
バリバリとした歯ごたえが絶妙です。フラダンサーのお姉さんとハワイ島の地図がプリントされた袋は
今もなお多くのリピーターを生み続けています。




コイケヤポテトチップス(湖池屋)


1953(昭和28)年、おつまみ製造会社を経営していた小池和夫氏が、
偶然飲食店で出会ったポテトチップスに感銘を受け、自社での製造販売を決めたのがはじまり。
従来の塩味に限らず、日本人の好みにあった味をと試行錯誤を繰り返した結果、
「のり塩」味を開発し、1962(昭和37)年に「湖池屋ポテトチップス」として販売を開始します。
当時は職人による釜揚げ製法だったので限られた量しか生産出来なかったのですが、
1967(昭和42)年に機械化に成功し、日本で初のポテトチップス量産化を成し遂げました。
初期パッケージはアメリカ西部の幌馬車のイラストが印象的ですが、
ポテトチップスはアメリカ発祥のスナックであると言う意匠なのでしょう。
のり塩味は今や日本のポテトチップスフレーバーの代表選手でもありますが、
そのパイオニアは湖池屋だったのです。



カルビーポテトチップス(カルビー製菓)



1975(昭和50)年に発売された日本の代表的ポテチ商品。
当時一袋100円という値段で販売されたが、これは
「日本のポテトチップス市場が拡大していないのは価格が高いから」という仮説に基づく値段設定によります。
しかし、発売当初は全然売れず在庫の山。
当時はスナック菓子に製造年月日や賞味期限を示す習慣が無く、
古い菓子でも棚の奥で何年も埃を被ってる、なんてこともありました。
故に本商品も棚の奥で売れず放置されてるうちに、油が酸化して廃棄せざるをえない事態に。
酸化の問題点から製造から半年が限界とされるポテトチップスを何とか主力商品にするために、
1976年から方針を一新。日本のスナック菓子で初めて製造年月日を記載する「鮮度戦略」を実施。
さらにパッケージにじゃがいものキャラクターを配置し親近感をかきたて、
TVCMも一新。初期のものは地味で「カルビーのポテトチイーッ、プスぅ…」という
マイナーなメロのジングルだったのを、「カールビーのーぉ、ポテトチップスっ!」と
掛け声もあかるい元気なものに。藤谷美和子のコミカルな演技や
「100円でカルビーポテトチップスは買えますが、カルビーポテトチップスで100円は買えません。あしからず。」
というコピーも流行語になり、一躍大ヒット商品に。
その後もコンソメパンチなどのフレーバーを増やし続け、今なお盤石の地位を守り続けています。




チップスター(ヤマザキビスケット)


1976(昭和51)年にヤマザキナビスコ(現・YBC)が販売したポテトチップス。
従来のスライスポテトを揚げるタイプではなく、いわゆる「成型ポテトチップス」タイプ。
長期保存が利かない従来型の賞味期限の短さの問題を解決するため、
1971(昭和46)年にプリングルス社が開発した製法
(ジャガイモを一旦乾燥フレークにして、調味料等を混ぜて成型、フライドする)を
参考に製造。日本初の「成型ポテチ」として世に出ました。
成型なので均一化されており、一枚一枚を隙間無しに一列密着で包装出来る利点もあります。
故にあの円筒形の容器に綺麗にならぶポテチの塔は成型ならでは。
湿気を防ぐためアルミ袋で内部梱包されていて、
封を切った後でも湿気対策にと蓋も付いています(とはいえお早めに)。
昔は紙筒にアルミの底、樹脂製の蓋という仕様でしたが、今は蓋も紙になっていますね。
名前の由来は「ポテトチップ界で人気NO.1のスターになるように」という意味が込められたものとの事。
発売からもうすぐ50年、今なお日本の成型ポテチの代表選手として現行販売中です。




ポテルカ(ブルボン)


チップスターと同じ1976(昭和51)年にブルボンが販売した成型ポテトチップス。
プリングルスに倣った筒缶パッケージのチップスターと異なり、
こちらは紙箱パッケージ。故に子供の頃の印象は「○のチップスター、□のポテルカ」という感じです。
缶と違って紙箱は安く済むし、輸送的に四角箱の方が隙間なく大箱に詰められるので
コスパ的にはいいという考えがあったのかも知れませんね。
味はチップスターに比べると塩味が控えめであっさり。
現在は筒箱にパッケージが変更になったものの、
今なお販売が続けられている隠れたロングセラーです。




ハウスポテトチップス(ハウス食品)



ヤマザキとブルボンが火花をちらしていた日本の成型ポテチ市場に殴りこんできた大型新人。
1978年にハウス食品工業が発売した本商品は、洪水の如く流された大量のTVCM
(西城秀樹がやってたっけ)、印象的な六角形の紙箱、
チップスターやポテルカに比べて薄い成型(その分枚数が増えておトクに思えた)もあって、
ヒット商品になりました。これを機にポテチ市場に参入したハウスはその後
様々な商品を展開していくことになるのですが、
本商品はその斬り込み隊長の任を立派に果たしました。現在は終売。




8分の5チップス(エスビー食品)



1979(昭和54)年、S&Bから発売されたポテトチップス。
もとは当時在職の女性社員から「市販のポテトチップスでは大きくて口に入らない。
もうすこし小さいサイズのものに出来ないか?」という
意見を受けた事がきっかけ。同じ成型ポテトチップスのプリングルスらが
俗に言うアメリカンサイズなのに比して、8分の5サイズにしたものを新たに開発。
これがそのまま商品名になり、女性の口でもひとくちでポイと食べれるコンパクト感、
ネーミングの愉快さも手伝ってヒット商品となりました。
プレーンのしお味のほか、グリルビーフ味・しそ味・かにマヨネーズ味なども販売。
後年さらに小さいサイズの8分の3チップスも販売されていましたが、
2003(平成15)年にS&Bがスナック部門からの撤退を発表。
24年の歴史に幕を閉じました。




わさビーフ(山芳)


1987(昭和62)年に山芳製菓が発売した異色のポテトチップス。
わさびとビーフをポテトチップスを絡めるという、
一種キワモノのような存在で当初は見られていたものの、
食してみると意外にわさびのツーンとしたピリ辛さとビーフのブイヨンがポテチに合い、
若い世代、とりわけ女子高生の間で人気が高まり、大ヒット。
気づけば同社の看板商品に上り詰め、今や山芳といえばわさビーフ、という認識が浸透しています。
マスコットの眠そうな牛のキャラクターは当初名前が無かったものの、
その後ツイッターで名前が「わしゃビーフ」と決定。
キャラクターグッズが販売されるなど人気を博しました(現在はキャラ変更)。
わさビーフもその後「わさビーフリッチ」「わさビーフMAX」と種類を増やし多くのファンの舌を唸らせています。




オー・ザック(ハウス食品)



1990(平成2)年にハウスが発売した新感覚のポテチ。
とにかくビックリのその仕上がり。揚げせんべいかと思うようなボコボコの仕上がりとクリスピーな歯応えは、
特許の「バブリング製法」により生み出され、適度な厚みとざっくりした歯ごたえが多くのファンを生みました。
元々はアメリカで発売されていたスナック菓子があり、
その独特の歯ごたえを気に入った開発担当者が日本用にとアレンジし、
ポテトチップスに転化させたという事です。
TM NETWORKやKinKi Kidsを起用したCMも人気を呼び、
今も唯一無二の存在感と歯ごたえを携えて商品棚にならんでいます。




ア・ラ・ポテト(カルビー製菓)



1989(昭和64・平成元)年にカルビーが発売したポテトチップス。
特徴はなんといってもそのギザカット。厚みと歯ごたえを両立させ、
フレーバーも乗りやすいという特質も持ち合わせ、
また、その年に収穫したばかりの北海道産の「新じゃが」のみを使ったという
プレミア感もウリに、新感覚のポテチとして大ヒットしました。
現在は季節ごとの販売商品として「春ぽてと」「夏ポテト」「ア・ラ・ポテト」「冬ポテト」として発売。
通年販売では「ピザポテト」でギザカットが味わえます。




堅あげポテト(カルビー製菓)


1993(平成5)年にカルビーが発売したポテトチップス。
従来のポテチとは比較にならない厚みと歯応えを誇る商品で、
多くの購入者が驚愕しました。厚切りにスライスしたジャガイモを
じっくり丁寧にフライすることで生み出される本商品は、
ただ歯応えがあるだけではなく、じゃがいも本来の旨みを堪能出来る事も特徴でした。
故に一度この商品を味わってしまうと元のポテチに戻れなくなるという中毒者続出。
「うすしお味」「ブラックペッパー」「焼きのり味」がスタンダートですが、
季節限定品もあり、多くのファンを魅了し続けています。



リセットボディベイクドポテト(アサヒフードアンドヘルスケア)



2014(平成26)年、ダイエットサポート食品「リセットボディ」ブランドを展開していた
アサヒフードアンドヘルスケアが発売したポテトチップス。
油で揚げる為、どうしても高カロリーになってしまうポテトチップスを
なんとかダイエットフーズに出来ないものかと研究を重ねた結果、
馬鈴薯とこんにゃく粉を練り込んだ生地をノンフライの二段加熱製法で
丁寧に焼き上げることで諸問題を解決。
その結果油分は従来のポテチの75%OFF。
一枚あたり4kcal、1袋食べても60kcalという低カロリーポテトチップスが完成。(商品は4袋入り)
成型ポテトチップスとベイクドスナックの中間的な存在とも言えなくもないのですが、
カロリー摂取を気にしている人にすれば、低カロリーのポテトチップスと言うのは
ありがたい事この上ない商品です。




ポテトデラックス(カルビー製菓)


2018(平成29)年にカルビーが発売した挑戦的商品その1。
封を開くと驚くのは、常軌を逸したメダルのような分厚い円形のポテチ。
通常のポテトチップスの約3倍の厚さを誇る超厚切りチップス。
この厚みのポテチを作るために、じっくり揚げて香ばしさを実現する「2度揚げ製法」を採用しており、
はじめはカリッと、後からホクホクとした食感の変化が楽しめる逸品。
その製法の手間などから最初は試験販売的に長野県と新潟県の限定商品として販売。
好評を得たことからその後関東の一都10県に販路を拡大。
現在は全国販売になっています。にしてもこの厚み、チップスというレベルじゃ無い。




シンポテト(カルビー製菓)


2020(令和2)年、カルビーがポテトデラックスに続いて出した挑戦的商品その2。
先の「ポテトデラックス」が最厚なら真逆を狙おう、という訳で「業界最薄」をウリにしたのが本商品。
薄いという事で油で揚げる際の諸問題をどうクリアするかで試行錯誤すること6年、
ようやく完成した苦心の作。儚くクシャリと崩れる繊細な歯応え、
ひまわり油を使用したギトギト感を廃した味など、
カルビーが今まで蓄積したポテチ技術をフル稼働した商品。
名前の由来は新商品の「新」と、薄いという意味の「THIN(シン)」をかけたところから来たそうです。





あらためて通してみると、日本のポテチって歴史あるなぁと
思います。ただジャガイモを揚げる、粉末化し成型し焼き上げる
というだけにとどまらず、様々な創意工夫が繰り返され、
日本独自の進化を遂げた商品も多々あります。
フレーバーなんか特に顕著で、日本発祥の味付けが
世界のポテチのスタンダートになってたりするし。
のりしおやテリヤキなんて、日本人じゃなきゃ発想しなかった。
今後もポテチは進化していくのでしょうね。

では次回。



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