看板


現在殆どのご家庭に普及している記録メディアというと、DVD(HDD)、
古くからあるモノにVHS、カセットテープといったところでしょうか。
ブルーレイやmp3はもうちょっと範囲が狭くなるかしら。

これらは企画競争の勝利者ゆえに繁栄を許されたものたち。
その影には企画競争に敗北あるいは全く普及せずに消えてしまった死屍累々の多くの犠牲があるわけで。
というわけで今回はこちらの御題。



消えた記録メディアの噺



うだうだ子ちゃん。
企画競争に勝つことは自社開発ブランドの標準化を意味します。つまり我が世の春。
一度スタンダート化されれば寝っころがっててもお金がわらわら入ってきます。
企業が自社規格をなんとかメインに広めようとするのは当然ですね。昨今では
ブルーレイVSHDDVDの戦いが記憶に新しいところ。どちらの船に乗るか…
どちらも魅力的な新技術の賜物で。一長一短それぞれあります。結果、
サードパーティを多く見方につけたほうが勝ち。ブルーレイを勝たせたのはディズニーという
風にも言われましたっけ。そういえばVHSの普及の一端を担ったのがアダルトビデオだったという
逸話もありましたっけ。魅力的なソフトはいつも強力な援軍になるのです。

実際それだけではないのですけどね。販売シェアの問題、時代の趨勢、いろんな不運、
結果それらに抗えず表舞台から消えていった挑戦者たちを今回ご紹介。







ベータマックス

ベータマックスデッキ ベータマックステープ



ソニーが本格的家庭用規格として大々的に販売したカセット型ビデオテープレコーダー。
1970年代序盤から研究開発をすすめ、従来のカートリッジよりも
小型化・高性能化を図り見事具現化した機体です。
ベータの名前の由来は「情報を詰めてベタに記録している状態」から
通称「ベタ記録」と開発現場で呼ばれていたことに起因しているとも言われ、
そこに最上級という意味の「MAX」をくっつけて出来た物とされています。

1975年、VHSに先駆けること1年、ベータは販売され、
黎明期には相当数のシェアを誇っていました。
また性能面ではVHSより優れていた点も多く、
ソニーの卓越した技術力の結集の前に、
他メーカーも当初は「民生用はベータで決まり」と見る向きが多かったのですが、

★VHSより部品点数が多く調整箇所も高い精度を要求される構造により、
 家電メーカーにとって家庭用ビデオの普及期に廉価機の投入が難しかった。
 (要するに頒布価格的に不利に働いた。)
★VHS陣営の積極的なOEM供給、精力的なソフトウエアビジネスも行ったことで
 先行していたベータ陣営は次第に追い詰められていった
★長時間録画モード(βIIIとVHS3倍モード)では、録画時間ではVHSに分があった。
★VHSが世界規格に昇華したことにより各ソフトメーカーもVHSソフトのみにシフト。ベータは孤立が進む。
★「ベータマックスはなくなるの?」「ベータマックスを買うと損するの?」という広告をソニーが新聞で発表。
 逆説的な内容でベータを盛り上げようという意図だったが理解されず、
 結果的にネガティブに捉えられユーザー離れが加速する皮肉な結果に。

などが相次ぎ、やがてベータ陣営に加入していた他メーカーもVHSに鞍替え。
市場が狭まる中ついに本家ソニーまでVHSに参入という状態になり、
ベータはヴィンテージ機種と化していきます。
マニア(ソニー信者含む)などには根強い人気があったものの、
2002年8月、ついにソニーはベータ方式VTRの生産終了を発表します。
ただ、放送・業務用の需要はまだあることから、今尚ベータのテープは生産が行なわれています。



U-マチック

u-マチックデッキ u-マチックテープ



1969年にソニーが開発したビデオカートリッジ規格。
松下電器、ビクターもこの規格に乗り、家庭用ビデオレコーダーの新しい統一規格(U規格)として売り出しました。
(U-マチックはソニーの登録商標。松下はUビジョン、ビクターはU-VCR。)
カセットの大きさは221×140×32mmと巨大な物で、
テープ幅が19mm(3/4インチ)であることから、「シブサン」とも呼ばれています。
テープ幅が大きいことから画像は鮮明だったのですが、その大型のデッキ、大型のテープゆえに
家庭用としては大仰過ぎ、また値段も高価(1972年発売のビクター U−VCR CR−6100の価格は
当時395,000円。)で、当時のビデオの性能上の欠陥
(60分以上録画が出来ない&一定の時間以上連続稼動させると画像の色が飛び白黒化&ノイズが起こる)
もあって一般家庭には殆ど普及せず、ホテルなどの業務用に卸されるのが主でした。
U-マチック自体はベータ以上の高画質を誇っていたため、放送局のフォーマット用としても使われていましたが、
デジタル記録方式の登場により、その役目を終え、
2000年6月にU規格のVTRの生産が終了、規格制定から数えて31年の歴史に幕を下ろしました。



Vコード

Vコードデッキ Vコードテープ




1972年に独自の規格開発を目指して、
東芝と三洋が開発した1/2インチ幅テープの縦長のカセットビデオ規格です。
当初のVコードの最大録画時間はテープのコンパクトさもあって30分しか録画できませんでしたが、
長時間モードの利用&改良型のVコード2の登場で最大2時間までの録画が可能になりました。
中身はU規格をそのまま縮小したような構造で、日立がやがてVコード規格に参入。
小型で便利という点でU規格の成し得なかった民生用標準規格に躍り出るかとも目されていましたが、
参入予定の松下が土壇場になって参入を中止。
その後ソニーのベータ発売によって優位性が失われ、製造終了・市場から撤退しました。



VX方式

VXデッキ VXカセット




松下がVコード参入を拒んだ最大の理由がこの「VX方式」を優先したからです。
松下の子会社の松下寿電子が開発したこのデッキは1/2インチ幅テープの縦型で
録画時間100分という長時間録画が標準化されてるのがウリでした。
(当時のベータマックスは60分が最大録画時間)

テープが独自の構造になっていて、α巻というねじれたような巻き方で、
テープ底部の小窓から直接ヘッドが当たる構造になっています。
(こち亀の「無加月くんの巻」で紹介されていた幻の逸品はこのビデオ。)
タイマーは別売りだったのでタイマー録画するには8900円払って
専用タイマーを購入し取り付ける必要があります。
テープも100分ものが7500円と大変高価で、気軽にエアチェックとはいかなかったようです。

結果、1975年から数年間販売が行なわれていましたが、
日本ビクターがVHSの開発に成功すると松下が鞍替えしたことにより、
VX方式は自然消滅してしまいました。



レーザーディスク

コンパーチブルプレーヤー レーザーディスク




フィリップスが開発した光ディスク方式のビデオディスクで、
直径30cmのものとジュニア盤またはシングル盤と呼ばれる20cmのものがあります。
(1979年に第一号機発売。日本の発売は1980年。当初のキャッチコピーは「絵の出るレコード」。)
容量は片面60分、両面で120分。映像はアナログで記録され、
接触式のヘッドではなく赤外線レーザーを使って読み出します。
画像は水平解像度が240本程度だったVHDに対し、レーザーディスクは400本以上と高画質で、
ヘッドの磨耗の心配がないことからユーザーに受け入れられ、ビデオディスク規格の勝者となりました。
しかし、VHSと違い録画が不可能だったこと(録画できるLDもあるにはありましたが高価で殆ど業務用)、
レンタルが全面禁止だったこと(末期にようやくレンタル用LD登場。差別化をはかるためディスクは金色)
DVDの登場による優位性の消滅などあって、21世紀に入ると衰退の一途を辿り、
2007年3月にディスクプレスの終了が発表され、これによりLDの歴史は幕を下ろしました。



VHD

VHDプレーヤー VHD




日本ビクターが開発した静電容量方式の直径26cmのビデオディスク。
専用のカートリッジに収納されており、カートリッジごとプレーヤーに差し込むと、カートリッジは戻り、
ディスクのみがプレーヤーに残って再生される仕組みになっています。
容量は片面60分、両面で120分となっており、ディスクはメタルブラック。
ヘッドを当てディスクを読み込む仕組みで、ビデオディスクと呼ぶにふさわしい仕様となっています。

1983年にようやく発売がされましたが、LDとの規格競争に敗退。
カラオケ業務用としての生き残りを図るも、2003年を持ってカラオケディスクも製造終了。
その歴史を終えました。



8ミリビデオ(HI―8)

8ミリポーダブルデッキ 8ミリビデオテープ




据え置き型家庭用VTRのシェアをVHSに奪われたソニーは
「カメラ用・据え置き用ともに使える小型カセット」でVHSに逆襲を仕掛けることになります。
その切り込み隊長が1985年発売開始の「8ミリビデオ」でした。
ベータと比較して大幅に小型化されてた テープは
メタルテープ(塗布型&蒸着型)を採用しており、高密度記録により、
当初より標準モードで120分の長時間記録が可能という優れもの。
カメラ用として普及を目指したVHS‐Cを圧倒的性能で凌駕し、
カメラ用といえば8ミリビデオという規格定着に成功。
江戸の仇を長崎で取るがの如く、ソニーはベータの雪辱戦に勝利しました。
しかし、小型で高画質で場所もとらない、といういい事づくめの8ミリビデオでしたが、
据え置き用の標準規格としては普及せずに終わりました。
理由はその頃巷で溢れかえっていた販売&レンタルのビデオソフト。
ほぼ全てがVHSの規格で販売・流通しており、8ミリビデオはレンタルソフトも販売ソフトも少数に留まり、
結果的に「8ミリビデオはカメラで撮影用&カメラで撮ったものを観る用」に限定されてしまった感が強く、
結果VHSの牙城を崩せず終わった感があります。
1995年、松下がより小型・高画質のDVを発表すると8ミリビデオの販売は次第に下降線を辿り、
多くのメーカーが撤退。
ただ、多くのホームビデオとしてテープが録画され残されているという現状を踏まえ、
受注制ではあるものの今尚デッキ生産は行なわれています。



VHS‐C

VHS‐C アダプタ




世界標準規格となったVHSでしたが、カメラ撮影ではカセットの大きさから
カメラの大型・重量化は避けられず悩みの種でした。
それを解決するために生まれたのがVHS‐C(コンパクト)で、
テープの大きさはVHSの1/3、標準モードで20分〜30分の録画が可能でした。
通常のVHSデッキにかけるためには専用のアダプターにセットして再生します。

8ミリビデオやDVの普及に伴い姿を消していきました。



8トラ(エイトトラック)

エイトトラックデッキ エイトトラックテープ




自動車のような激しく動く環境の中でも聴けるオーディオテープを目的として
1965年に開発されたカートリッジ・テープ。再生専用に特化した傾向の強いメディアで、
おもにミュージックテープとしてレコード会社から録音済みのカートリッジが発売されていました。
仕組みは磁気テープの始端と終端をつないだエンドレス式テープで、
構造上巻戻しが不可能。早送りのみが可能というのも特徴のひとつで、
2トラックのステレオチャンネルが4つあり、合計8トラックの信号が録音されていたため
「8トラ」という名称で呼ばれるようになり、
1970年代にはカーステレオ用カートリッジ・カラオケ用として普及しました。

しかし、70年代後半になるとコンパクトカセットテープの音質向上、CDの出現によってシェアを奪われ、
巻き戻しが出来ないという欠点を持つ8トラは市場から撤退。
今は業務用として一部が生き残っている状態です。



エルカセット

エルカセット広告 エルカセットテープ



カセットテープの性能や音質があまり良くなかった1976年に、「オープンリールの音を、カセットに。」という
開発思想の下、ソニー、松下電器産業(現パナソニック)、ティアック(TEAC)の3社が提唱した
新規格カセット。文庫本大(152mm×106mm×18mm)のカセットシェルに
1/4インチ幅(6.3mm / オープンリールテープと同一)のテープが入っていて、
カセットの手軽さとオープンリールの音質の両方を備えた画期的な規格として
鳴り物入りでデビューしました。当初は大いなる期待を持って迎えられたものの、

★他のオーディオメーカーが結果的にこの新規格に乗らずガラパゴス化
★テープ価格がコンパクトカセットの約3倍で、たくさん録音したいというユーザーの希望に応えられなかった
★コンパクトカセット向けのメタルテープの市場投入が始まり、以後カセットデッキの性能や音質が飛躍的に向上
★オープンリールの音質には適わず、結果カセット、オープンリールどちらのユーザーにもそっぽを向かれた

などが複合的要因となり、結果として市場は一向に広がらず閉塞。
1979年にはソニーが エルカセットデッキの生産を中止。
1980年には販売も終了し、あっという間に姿を消してしまいました。



シンクロファックス(シート式磁気録音装置)

デッキ(リコーマイティーチャー) 専用磁気シート




「紙に声を吹き込む、紙から声を出す」をキャッチフレーズに
1960年にリコーが販売を開始した全く新しい録音メディア。
A4サイズのシートの裏面に磁性体を塗った磁気シートに音声を記録・再生するという仕組みのもので、
「リコーシンクロファックス」(1960年当時価格38,900円)という名称で
ビジネス用に大々的に売り出しました。
シート式音声録音機 シンクロリーダー方式の原案は
あのドクター中松発案の磁気シート「ナカビゾン」という話もあります。

シートを機器にセットし、再生ボタンを押すと円盤状の磁気読み取り針が時計回りに渦巻きながら回転、
3分前後の録音・再生が可能でした。
当時の広告では
「部長がいなくても、指示・伝言はこの録音紙があれば十分。複製もでき書類として郵便で発送をできる」
というもの。
が、結果的に殆ど普及はせず。

その10年後、全く同じシステムを使用した「リコー・マイティーチャー」なる機器が学習教材用に登場。
1970年代を中心に訪問販売等で頒布されました。



HDDVD

HDDVDデッキ HDDVD




正式名称はHigh Definition DVD。
東芝とNECが共同開発した次世代DVD規格で、
2002年8月にDVDフォーラムに提案発表されました。
ディスクは12cmで、青紫色レーザーを採用しています。
最大容量は、片面単層15GB、片面2層30GB。

ブルーレイと壮絶なる次世代DVD規格覇権闘争を繰り広げましたが結果的に敗れ、
2008年2月に東芝が全面的な撤退を発表。
次いで大手量販店が一斉にHD DVDレコーダー・プレーヤー販売の全面終了を発表、
一気に市場から淘汰されてしまいました。




うちもようやくHDDレコーダーに切り替えました。でもこれもそのうち
「なんだ。まだこんな古臭いので録画してんのかよ」ってなるんでしょうね。
VHSのテープも相当数あるからデッキがなくなると困るよなぁ…
でも最近規格の変遷が激しくなりすぎてユーザーぶっちぎり状態が続いてるような…
ではまた次回。



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